本会議において、国務大臣の演説に対する質疑が行われ、自由民主党からは尾辻秀久参院会長が質問を行いました。
その後、日本学術会議の第4回立法学分科会にて「政権交代後の立法過程のあり方」というテーマで講演をしました。慶應義塾大学法科大学院で教鞭をとり、参議院法制局主幹を務めている川崎政司教授にも、コメンテーターとして手伝ってもらいました。
民主党中心の現政権下では、管副総理の「日本国憲法に三権分立は無い。」の言葉で象徴されるように、国会・与党・内閣の関係が大きく変えられようとしています。現政権下では、与党・政府の一体化が強調され、実質上、内閣(すなわち閣僚となっている与党の一部の議員)に、立法権と行政権の両方が握られた状態となっています。総選挙で過半数を得た以上、政策の決定・運営の権限はすべて内閣にあり、国会審議は単なる手続き過程にすぎないという扱いになっています。内閣に入っていない民主党の議員は、原則として、委員会での質問や、質問主意書の提出、議員立法の提案など、国会議員としての当然の権能も禁じられています。与党の政策部会では、政府側の説明を聞かされるばかりで、一般の議員の意見はほとんど反映されないようです。独裁体制に近い、国際的に見ても例を見ない非常に強いトップ・ダウン型の政策決定方式です。
我々が与党の当時は、与党の政策部会が多数の議員の意見の取り纏めを行い、それに基づいて政策を決定していました。現政権とは反対に、ボトム・アップ型でコンセンサスを得ていく方式の政策決定法で、議員一人ひとりに、常に自分の意見を政策に取り入れてもらう機会が保障されていました。各議員は、平素の活動で地元や職域の現場で国民の皆さんの様々な考え方にふれていますから、それが結局は、出来る限り幅広い国民の皆さんの声を反映した政策作りとなるのです。私も、当選の数か月後には、既に自分の意見を基に医療政策を変えることができましたが、このような民主的なシステムが確保されていたから可能だったのです。
民主党の主張のように、ひとたび総選挙で過半数を得て政権を握れば、すべて思い通りに政策を決定する、ということが果たして許されるのでしょうか。確かに、以前のコンセンサス方式では、意思決定に時間がかかることや、官僚や業界と結託した、いわゆる族議員の抵抗によってなかなか改革が進まないことなどの問題点が指摘されていました。このため、旧政権時代は、多くの政治学者が、内閣主導のリーダーシップを求めてきました。この点、旧政権の中でも、小泉純一郎元首相は、これらの問題点を打破し、「聖域なき改革」を掲げて内閣主導の強いリーダーシップを発揮し、それが2005年のいわゆる郵政選挙において、有権者の強い支持を得る結果につながりました。
しかし、それから4年のうちに、強く支持されたはずの「改革」は世論の支持を失い、むしろ他党からの激しい批判の対象となるようになりました。この4年間から学ぶものは何なのでしょうか。「それ故、政権交代が起った。現政権が強いリーダーシップで失敗すれば、再度、政権交代が起こる。それが二大政党制の常道である。」と考える学者もいます。しかし、それでは政治が大変に不安定となり、社会保障や成長戦略、温暖化対策などの長期的な視点が必要な政策が頻繁に変更される結果となり、結局、日本が近いうちに立ち行かなくなってしまう危険性が大きいと思います。
今回の総選挙では、比例区の得票数を比較すると、自民党の得票数は民主党の得票数の約63%です。つまり、5対3、あるいは3対2で、民主党を支持した有権者が多かったわけです。それが、小選挙区制度という選挙制度の故に、現在の民主党の圧倒的多数が実現したのです。民主党以外の党へ投票した有権者の意見を切り捨てて良いことにはなりません。そもそも、論理的には、「社会の均衡を一般的に達成するような投票ルールは存在しない」(アローの一般不可能性定理)という原理が知られており、結局は一つの多数決制度で得られた結果は、決して「民意」そのものではないのです。現政権は、ガソリンの税率維持や、後期高齢者医療制度の存続など、既に総選挙時のマニュフェストをどんどん破っていますし、また、鳩山首相、小沢幹事長の政治資金規正法違反の問題や、定住外国人の参政権問題など、総選挙時には争点にならなかった問題も数多く出ています。現在の民主党政権に、数の論理で独裁的に政策を決定する正当性がどこにあるのでしょうか。
政治学者、法学者ばかりの議論でしたが、立法過程や統治機構のシステムについて熱い議論が続きました。
