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健康科学コラム

No.35:COVID-19の後遺症

日本のCOVID-19も2年半の間に7回の感染の波が繰り返し、2022年8月末現在、累計感染者数も1800万人を超えています。2022年に入ってからのオミクロン変異株の波では、ワクチン接種が進んだこともあって軽症化しており、療養は自宅を基本とすることとし、感染対策と社会経済活動の両立が図られてきました。言ってみれば、SARS-CoV-2感染症を特別視しない、別に感染しても気にしない、という段階となっていて、その意味で、日本社会におけるパンデミックは出口に来たと言えると思います。ただ、知っておいて頂きたいのは、COVID-19では高率に後遺症(「長期COVID」と呼ばれます。)が発生することです。研究によってバラツキがありますが、COVID-19で入院した患者では、半年後で40~70%、1年後で25~50%の患者に、疲労感や倦怠感、息苦さ、不安や抑うつ、睡眠障害などの症状が認められています。女性の方が男性より後遺症が起こり易いようです。症状は時間と共に軽減していく傾向にあり、約9割の患者は、1年後には、以前の職場に復帰していた、と報告されています。一般に、後遺症の程度は、急性期のCOVID-19が重症だったほど重くなりますが、入院を必要としなかった軽症者でも20~40%で認められています。COVID-19は一般に小児を含む若年層では軽症ですが、小児における後遺症も数%で認められています。COVID-19ワクチン接種者での感染(打ち抜き感染)では、未接種の場合と比較して、後遺症の発生率や重症度が大きく低下することも明かになっていて、この点でも、ワクチン接種が勧められます。