健康科学コラム
2026年03月25日

No.44:がんの予防⑤・身体の活動

皆様「運動が健康に良い」ことは、良くご存知だと思います。運動は循環器リスクの低減や肥満の防止にも役立つため、厚労省では、18歳から64歳の人については、“歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分”及び“息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと”を、65歳以上の人については、“強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと”を推奨しています。ただ、日々の仕事や休日の予定で忙しい中では、この推奨通りに運動時間を確保することは、なかなか難しいのではないかと思います。ですが、何もしないというのは得策ではありません。

日本の10ヶ所の地域で45-74歳の男女約8万人を10年間追跡した研究では、仕事や余暇の運動を含めた1日の平均的身体活動を、時間や強度によって4群に分けたところ、男女とも、身体活動量が多い群ほど、何らかのがんにかかるリスクが低下していました。身体活動量の最小群と比較した場合、最大群のがん罹患リスクは、男性で0.87倍、女性で0.84倍で、低下の傾向は女性でより明らかで、さらに高齢群や余暇の運動頻度の多い群でより明らかでした。他の研究でも、仕事や運動などで身体活動量が高い人ほど、男性では大腸がん、女性では乳がんの発生リスクが低くなることが分かっています。身体活動量が増えると、何故がんの予防につながるのかは完全に解明されてませんが、発がん促進性を持つインスリン・インスリン様成長因子(IGF-1)の低下、免疫調節能の改善、フリーラジカル産生の抑制などがメカニズムとして推察されています。まとまった運動の時間を確保することが難しい人でも、通勤や買い物など、日常の生活の中で可能な方法により、よく動く時間を増やしていくことが、がんの予防につながります。地下鉄1駅分なら歩く、ワンメーターのタクシーは歩く、などを心掛けましょう。