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2008.03.03

Topics No.7: 道路特定財源について

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1.道路特定財源とは

自動車関係の税のうち、自動車税及び軽自動車税を除く、揮発油税・石油ガス税・地方道路税・自動車取得税・軽油引取税の5税のすべて及び自動車重量税の77.5%が国道、都道府県道、市町村道の整備費用に充てられていることから、一般にこれらの税は「道路特定財源」と呼ばれます。地方道路税(国が、都道府県及び市町村に対し、道路に関する費用に充てる財源を譲与するため、揮発油に課税(地方道路税法第1条))、自動車取得税(都道府県が課税(地方税法第4条第4項、第699条))及び軽油引取税(都道府県が課税(地方税法第4条第4項、第700条))は最初から特定の経費に充てる目的で課される目的税です。他方、揮発油税、石油ガス税及び自動車重量税は、税制上は使途が特定されていないものの、財政上の措置として、その税収の全部又は一部が特定事業の財源に充てることとされている純粋な特定財源です。 例えば、揮発油税全額及び石油ガス税の2分の1の合計額は、道路整備費財源特例法によって、平成15(2003)年度以降5箇年間は、道路整備の財源に充てることとされています(第3条)。 地方の財源としては、都道府県が課税する自動車取得税及び軽油引取税のほか、自動車重量税の3分の1は市町村に、石油ガス税の2分の1は都道府県及び政令指定都市に、地方道路税の全額は都道府県及び市町村に、それぞれ譲与されます。 また、暫定税率については、石油ガス税を除く5税は、法律で定めた本来の税率を上回る暫定税率が適用されており、平成19(2007)年度は上乗せ分だけで2兆5千億円を超えます。

2.道路特定財源の経緯

道路特定財源は、戦後の道路需要に対応するために財源を確保することを目指し、昭和28(1953)年に道路整備費の財源等に関する臨時措置法が制定されたことに始まります。昭和49(1974)年には道路財源不足に対処するため、暫定措置として揮発油税、地方道路税、自動車重量税、自動車取得税の税率が引上げられました(昭和51(1976)年に軽油引取税の税率も引上げ。)。 これ以降、道路整備5か年計画の期限が来るごとに暫定税率の適用が延長されてきました。

3.道路特定財源の問題点

受益者負担又は原因者負担という考え方からすると、道路整備に充てるために、自動車の通行により道路を利用する者が、税金を課せられることは、全く不合理なものとはいえないでしょう。 一方、目的税や特定財源は、特定事業の財源を確保するという意味がありますが、多用すると財政の統一的な運営が困難になり、財政硬直化の一因ともなります。終戦後や高度経済成長の時代においては、道路整備の必要性がかなり高かったため、道路整備の財源を確保することにも重要な意義があったでしょうが、現在の厳しい財政状況のもとにおいては、年金や医療、介護よりも道路整備の方が、一般財源と別枠で確保するほど優先順位が高いとは必ずしも言えないのではないでしょうか。 したがって、道路整備においては、現在の財政状況を熟慮した上、道路の利用予測や整備による経済効果等の根拠に基づいて優先順位を客観的に判断し、不要・不急と判断されるものは凍結し、余った資金を一般財源として年金、医療、介護といった重要性の高い社会保障費に回すことが必要であると考えます。 ただ、その際に重要なのは、道路整備の優先順位の判断においては、単に費用対効果だけを基準にするのではなく、地域の基盤整備の必要性という視点を加味したものとすべきことだと思います。 経済的効果はどうあれ、地域住民の生活のためには欠かせない道路もあるでしょう。 また、暫定税率については、近時は原油価格が高騰しているものの、厳しい財政状況や窒素酸化物や温室効果ガスの削減方針を考えると、直ちに撤廃することは難しいと考えています。 参考図書:金子宏「租税法(第12版)」(2007)、参議院事務局企画調整室「立法と調査」275号(2008年1月)、国立国会図書館「道路特定財源の見直し」(Issue Brief 第539号(2006年5月8日))