No.40:がんの予防①
がんの治療や予防医学の進歩により、日本人の全がんの年齢調整後の罹患率は、2010年頃まで増加していましたが、その後は横ばい、死亡率は1990年代後半から減少しています。
最新の統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率(2019年のデータ)はは男性で65.5%(3人に2人)、女性で51.2%(2人に1人)で、日本人ががんで死亡する確率(2022年のデータ)は男性で25.1%(4人に1人)、女性17.5%(6人に1人)となっています。
部位別で見ると、男女共に胃がんが減少している一方、男性では大腸,肺,前立腺が、女性では、乳腺,大腸,子宮,肺が増加していています。
国立がん研究センターは科学的根拠に基づき、「確実に効果が期待できる生活習慣改善法」として、①禁煙、②節酒、③食生活の見直し、④身体の活動、⑤適正体重の維持、の5つと、⑥感染症対策を挙げています。
①~⑤は、循環器疾患、糖尿病等の他の生活習慣病の主たる要因として知られていますが、がんのリスクにも明らかな関係があり、がんが生活習慣病の1つであることを示しています。
①~⑤の2つ以上を気を付けて生活している人と、1つ以下しか気をつけていない人を比較した研究では、前者のがんの罹患リスクが男性で43%,女性で37%低下していて、①~⑤の各1つについて、男性では14%,女性では9%のリスク低下でした。
⑥の感染症対策とは、㋐ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、㋑肝炎ウイルス、㋒ヒトパピローマ・ウイルス(HPV)への対策です。
㋐ピロリ菌は胃がんの原因の1つですが、抗生物質の服用で除菌することが可能となっています。㋑B型及びC型肝炎ウイルスは肝硬変,肝がんの原因の1つですが、C型は完治が可能となり、B型の治療法も進歩しています。
㋒HPVは子宮頸がんの主たる原因ですが、ワクチン接種による高い予防効果が知られています。
がんは日常的問題となっています。次回以降、①~⑤について詳しく述べていきたいと思います。