健康科学コラム
2025年05月01日
No.41:がんの予防②・喫煙
国立がんセンターによれば、2019年の日本の喫煙率は男性27.1%、女性7.6%、男女計16.7%ですので、喫煙されている人も一定数いると思います。
喫煙は、がんの罹患に最も強い関係のある生活因子です。喫煙者本人のリスクとして、がんで亡くなった人のうち、男性で約30%、女性で約5%は喫煙が原因と推計されています。
煙草の煙に直接暴露される鼻腔、口腔・咽頭、喉頭、肺、食道などのがんは勿論、肝臓・胃・膵臓・子宮頸・膀胱のがんも、喫煙と明らかな因果関係があります。
喫煙は、がん以外の慢性閉塞性肺疾患、脳卒中、虚血性心疾患、糖尿病、動脈硬化とも明らかな因果関係があります。
妊婦の喫煙は、早産や低体重出生時の原因となります。更に、喫煙は、周りの人の健康にも悪影響を与えます(いわゆる受動喫煙)。
周りの受動喫煙は、肺がん、脳卒中、虚血性心疾患、子供の喘息の明らかな原因となり、また、鼻腔がんや乳がんとも因果関係が疑われています。
喫煙は、医師としては、第1に止めて頂きたい生活習慣です。
ただ、長年喫煙を続けてきた人の中には、「今更止めても無駄だろう」と言って止めない人がいます。
確かに、がん細胞は発生してから病巣として検出されるまで長い年月が経過している場合が多いと考えられており、疫学調査でも、禁煙によって肺がんのリスクが半減するには約10年後を要するとの結果でした。
しかし、禁煙による呼吸循環器系統の健康上のメリットは早期から発生し、喫煙後20分以内に心拍数と血圧が低下し、2~12週で血液循環が改善して肺機能が高まり、1年で虚血性心疾患のリスクが喫煙者の約半分になるなどの好ましい変化が起こります。
呼吸と循環は、人間の最も重要な身体機能です。健康で長く人生を楽しむため、是非とも今日から禁煙を始めましょう。