健康科学コラム
2025年05月01日

No.43:がんの予防④・食生活

食生活とがんには、世界的に多くの相関が報告されていますが、研究対象とする人種・民族の違いによって、結果が多少異なっています。

ここでは、国立がん研究センターの日本人を対象とした研究・評価の結果を紹介します。

国立がん研究センターが日本人を対象に行った調査では、男性では、食塩摂取量が高いほど胃がんリスクが上がり、最も高い群では、低い群と比べてリスクは2倍以上になりましたが、女性では明らかな関連が見られませんでした。

一方、塩分濃度の高い塩蔵魚介類(塩蔵魚卵、塩辛・練ウニなど)の週当たりの摂取回数が多いほど、男女とも、胃がんリスクが上がり、最も多い群では、少ない群と比べてリスクは2.5~3倍以上となりました。

動物実験では、胃内で塩分濃度が高まると粘膜が損傷されて胃炎が発生し、発がん物質の影響を受けたり、ピロリ菌の感染が起こり易くなることが示されており、胃がんリスクが上がるメカニズムと推測されています。

減塩は、胃がんの予防のだけでなく、高血圧、循環器疾患のリスクの低下にもつながります。

厚生労働省は、日本人の食事を考慮して、1日当たりの食塩摂取量を男性は7.5g未満、女性は6.5g未満とすることを推奨していますが、国際的には、5~6グラム未満が目標とされています。

また、野菜と果物を積極的に摂取することも科学的ながん予防法です。

国立がん研究センターの日本人を対象とした研究の評価では、野菜・果物の摂取で食道がんのリスクが低くなるのは「ほぼ確実」、胃、および肺がん(果物)のリスクが低くなる「可能性がある」という評価でした。

これまでの研究で、野菜・果物の摂取が少ない群で、がんのリスクが上がることが示されていますが、多く摂れば摂るほどリスクが低下するという知見は限られています。

大腸がんについては、海外の研究では、食物繊維の摂取量が多いほどリスクが下がるというよく知られた報告もありますが、日本人については、食物繊維の摂取が最低の群が最も摂取量の多い群に比べて大腸がんのリスクが2.3倍に上昇することが示されたものの、1日10グラム以上の摂取では、リスク低下は認められませんでした。

野菜や果物の摂取は脳卒中や心筋梗塞などの生活習慣病の予防にもつながります。

厚生労働省では、1日あたり野菜を350gとることを目安とし、果物もあわせた目安としては、野菜を小鉢で5皿分と果物1皿分を食べることで、おおよそ400gが摂取できるとしています。

更に、国立がん研究センターでは、熱い飲食物の摂取により食道がんのリスクが上がるのが「ほぼ確実」と評価しています。

熱い飲食物は食道粘膜を傷付けるためであり、熱い飲食物は、少し冷まして摂取することで、、食道のがんのリスクを下げることが期待できます。