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健康科学コラム

No.8:「食事によって脳を守る」

高齢化が進むに従い、認知症患者が著しく増加し、特に、有効な治療法が確立していないアルツハイマー病が増えています。アルツハイマー病は、脳に異常なタンパク質が蓄積し、脳細胞に毒性を示すために起こる病気と考えられています。ロナルド・レーガン米大統領が退任5年目に自ら告白したことは有名ですが、どんなに活躍する人にも起こり得る難病です。   1935年、マウスの摂取カロリーを70%くらいに減らすと、マウスの寿命が長くなることが分かりました。栄養状態の悪い方が長生きするという驚くべき結果です。後に、他の多くの生物でも、同様なことが起きることが分かり、現在では、カロリー制限は、無脊椎動物から哺乳類まで、動物の寿命を延長することが知られています。同時に、加齢に伴う病気に罹りにくくなることも分かっています。アルツハイマー病も高齢期に発病する病気なので、カロリー制限によりアルツハイマー病の予防が期待されます。実際に、動物実験では、カロリー制限によってアルツハイマー病で現れる異常タンパク質が減少し、一方、高脂肪食を与えた場合には異常タンパク質が増加していました。食事の量と質でアルツハイマー病の発症を予防できる可能性を示す結果です。実際の疫学調査でも、高カロリー食や高脂肪食がアルツハイマー病の発症の一因になっていることが示されています。   健康イメージ 具体的な食事内容については、オリーヴオイル、果物、野菜、豆類、穀物、魚類などの多い地中海食や、魚、豆、穀物、野菜を中心とした日本食が認知症予防に有効であると考えられています。また、調査結果では、複数の野菜または果物を2日に1回以上摂取することが発症予防に重要であることや、魚に含まれている不飽和脂肪酸や、ビタミンC、ビタミンEなどが認知症も減らすと期待されています。ただし、サプリメントではなく、野菜や果物として摂取した場合に有効性が認められている点が重要でと考えられます。