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健康科学コラム

No.20:花粉症について

今年も花粉が飛散する時期となりました。花粉症は国民の約25%が罹患していると考えられる国民病です。花粉症の約70%はスギ花粉症だと推察されており、特に、スギの人工林が多い関東・東海地方では、スギ花粉症の患者が多くなっています。関西では、スギとヒノキの植林面積がほぼ等しいため、ヒノキ花粉症にも注意が必要とされています。関東地方では、2月から4月はスギ花粉、4から5月はヒノキ花粉が飛散します。

 花粉症の症状は、身体が花粉を異物と認識して、過剰な免疫反応が生じるために起こります。昨年まで症状が無くても、今年突然発症する場合もあります。大量の花粉に暴露されると、身体が花粉に対する抗体を産生する可能性が高まり、花粉症を発症し易くなるため、現在は花粉症の症状に罹患していない人でも、なるべく花粉に接しないよう注意することは重要です。マスクやメガネは鼻孔や眼に入る花粉の量を3分の1程度まで減らし、また、うがいや洗顔も効果があります。例年症状が出る人でも、症状が出始めた初期では鼻粘膜への炎症の進展が軽いため、早期に治療を開始すると粘膜の炎症の進行を止め、重症化を防ぐことができます。一旦強い症状が出て鼻の過敏性が強くなると重症化し易くなります。

 治療としては、一般的には、抗アレルギー点眼薬・点鼻薬、内服薬による対症療法が第一選択です。花粉が飛び始める初期から治療を開始すれば、5割から6割の患者で、ほとんど症状が無く過ごすことが出来ることが報告されています。重症例に対しては、減感作療法という原因花粉を少量ずつ投与する根本治療もあり、高い治療効果も報告されています。従来は通院の上で皮下注射で行われていましたが、現在では、自宅で投与可能な舌下療法が可能となっています。

 一方、花粉症対策として、各種植物エキスや食材、ヨーグルトや乳酸菌剤などが雑誌やインターネットで紹介されています。これらの民間療法には、科学的に有効性が実証されたものはありません。害が無ければいい、という考え方も出来ますが、植物や食材でも多量に摂取すると有害になる物もあり、注意が必要です。

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写真:環境省・花粉症環境保健マニュアルより