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健康科学コラム

No.21:ペットを飼うか、飼わないか?

最近、愛犬を赤ん坊と同様に、高価な服を着せてベビー・カーに乗せている人を見掛けるようになりましたが、人と愛玩動物との接触が濃厚になってきています。動物由来感染症には、多くの細菌や寄生虫感染症が知られており、動物から人への病原体の伝搬は距離が近いほど容易になるので、注意が必要です。犬・猫の口腔内常在菌によるパスツレラ症は、犬猫咬傷による感染症では代表的なもので、局所の発赤・腫脹、発熱が主症状で、関節炎や骨随炎に進展することもあります。経気道感染も多く、気管支炎や肺炎を起こします。猫ひっかき病は、掻傷やネコノミにより感染し、受傷部位の丘疹・発熱、リンパ節腫脹などが起こります。重篤なものとしては、犬猫の口腔内常在菌であるカプノサイトファーガ・カニモルサス感染症があり、主に咬掻傷により人に感染しますが、病原性が強く、敗血症を起こして致死率は30%と報告されています。高齢者を中心に、年間100例程度の患者はいるのではないかと推定されています。人が、乾燥して空気中に浮遊するオウム・インコやハトの糞中の病原体を吸入して感染するオウム病は、インフルエンザ様症状を起こし、肺炎や髄膜炎に進展する例もあります。

このように、動物由来の感染症には注意を要する一方で、ペットの効用に関する研究結果も出ています。犬を飼育すると、どの世代でも身体活動量が有意に増加し、うつ病予防にもなるとする報告や、ペットとの乳幼児期からの接触が、喘息の予防になるとする報告があります。また、2万人以上の日本人高齢者を対象とする研究では、犬猫を飼育している群の生存率は、飼育していない群に比べて有意に高く維持されると報告されています。

埼玉県の皆さんの中にも、ペットを可愛がっている人は少なくないと思います。健康面でも積極的にお勧めできる点もありますが、飼育するならば、健康状態の変化に十分に気をつけましょう。