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活動報告

8月1日⑤

続いて、福島県南相馬市において、立ち入り禁止区域のすぐ外で、現在も医療機関を開業している医療従事者の皆さんの支援について質問しました。この地域では、物流も悪く、この地域の住民は激減しているが、残っている住民がいる以上、その方々の健康を守るために、必死で頑張っている医療機関です。
 患者も激減しているので、当然、経営は成り立ちません。皆、赤字に苦しんでいます。特に、出産数と子どもの数が減っているので、産科と小児科は深刻だそうです。
 これら医療機関の損害は、当然、賠償されなければならず、一刻も早く支払を始めて欲しいという要望が上がっています。そうでなければ、結局は、ほとんどの医師が被災地を離れてしまい、今後の地域医療の再建は不可能となってしまうと考えられます。
 海江田大臣は、「より迅速に賠償するよう努力する」と約束しました。
 また、被災地全域について、公的医療機関と比較し、民間医療機関、特に診療所に対する支援が、ほとんど考慮されていません。被災地域では、もともと医師が少なく、また、高齢の患者さんが多く、大病院から、診療所までが、それぞれの機能を果たして、住民の健康を守っている地域なのです。菅総理は、7月25日の予算委員会で、「前向きな対応を行う」と約束しましたが、この点の具体的内容について、細川律夫厚生労働大臣に説明を求めました。
細川大臣は、被災した民間医療機関も支援できる基金の創設を第3次補正予算で検討する考えを示しました。地域医療を守るためにもぜひとも実現をお願いしました。
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8月1日④

極めて問題なのは、スピーディのデータを隠してきたことです。データは3月11日の震災直後から得られていたのに、それを隠し続け、5月2日になって約5000枚のデータを公表すると明らかにしました。細野補佐官は(当時)、「公表することでパニックになることを恐れた」と言っていますから、明らかに恣意的な情報隠しです。総理も大臣も、後になっていくら「遺憾だ。責任を感じる。」と繰り返したところで、起こってしまった被爆は取り返しがつきません。
データが直ぐに公表されていれば、住民はずっと少ない被爆量で済んだはずです。実際は、既に20ミリシーベルトを越える被爆が起こっている人がたくさんいる、と多くの専門家が指摘しています。これは、政府の明白かつ極めて重大な過失です。住民の皆さんの健康に影響が出ることが非常に深く懸念されます。
国立がんセンターの発表によれば、100ミリシーベルトの被爆によって癌のリスクは、1.08倍になるとされています。避難地域の住民の皆様は、約20万人、そのうちの約3割、6万人は癌によって亡くなります。リスクが1.08倍に増えれば、癌で亡くなる方も約4800人増えます。確率的影響の観点から、20ミリシーベルトの被爆なら約960人、10ミリシーベルトの被爆なら約480人が癌によって余計に亡くなると考えられます。
政府がスピーディのデータを隠していたことで、実際、どのくらい被爆が増えたかは、後日、検証すべき問題と考えていますが、3月当時からのモニタリング結果から概算すると、2週間でも、数ミリシーベルトの被爆が起こっていたと考えられる地域が数多くあります。これが、仮に5ミリシーベルトとしても約250人、2ミリシーベルトとしても約100人の方が、政府の無能なる情報隠しによって、余計に癌で亡くならなければならないのです。
 政府は、将来、福島の皆様に癌が発生した場合の責任をどのようにとるつもりなのでしょうか?この責任は、菅氏が総理大臣を直ちに辞任したところで、献金問題で議員辞職したところで、一生問われるべきものだと思います。総理大臣の地位に固執するだけの菅氏に、刑事責任にも比すべき、その責任の重さを問いました。
次に、癌を発病した人への賠償の問題について、政府の対応方針を問いました。現在、全福島県民を対象に健康調査を行うことになっています。3月11日以降の居場所について、県民約200万人に回答してもらい、そこから被爆量を推計しようという調査です。ただ、そもそも、回答の正確性、そこから被爆量を推計することの正確さについて、数多くの問題があります。
その上、癌は、被爆から、数十年経ってから発生することもあるので、今回の被爆の実際の影響がどのようなものであるかは、今後、この調査を数十年続けて、やっと判明するものなのです。
 しかし、その前に癌を発病する人は沢山いると考えられます。今後、調査結果が出る前に福島の皆さんに癌が発生した場合、政府として、この方々の被爆と発癌との因果関係を、どのように考えて対応するのか、問いました。
 海江田大臣は、信じられないことに、「訴訟を起こしてもらえばいい」と答弁しました。すなわち、被爆線量の高い避難地域の方々が発癌した場合であっても、訴訟で国に勝たなければ救済を受けられないということなのです。前述した労災の場合とは著しい差異ですが、今後、この問題については、場を改めて問うていきたいと思います。


8月1日③

政府は「ICRPは科学的で権威ある国際機関である」としてその基準を金科玉条の如く言っていますが、実際には、ICRPの基準も、その科学的根拠には大きな疑問が」あります。
これまで、100ミリシーベルト以下の低線量被爆の健康への影響については、科学的にはっきりとしたことが分かっていません。それは、過去の一般市民が被爆した事例が、広島・長崎への原爆投下とスリーマイル・チェルノブイリしかなく、これらにおいて、低線量の長期の被爆について十分な調査結果が得られていないからです。
実は、原子力発電所で働いている人達は、長期に断続的に低線量の被爆を繰り返しています。したがって、これらの方々の健康調査を行えば、長期の低線量の被爆の影響が分かるのです。そのため、各国で原子力発電所で働いている人達の健康調査が行われてきましたが、データのフォローアップが悪く、十分に信頼性あるデータが得られていない点が問題でした。
日本には、文科省の委託による財団法人放射線影響協会による日本の原子力発電施設の放射線業務従業者27万7128人を対象とした調査があります。これは、国際的に見て、極めて完成度が高い調査です。
まず、放射線業務従業者と同年齢の一般人を比較した外部比較調査の場合、放射線業務従業者においては、肺癌(標準化死亡比SMR:1.08)と肝癌(SMR:1.13)による死亡が明らかに多くなっています。また、全悪性新生物及び白血病を除く全悪性新生物による死亡も、有意に(科学的に言って、偶然では説明できない程度に)多くなっています。
重要なのは、放射線業務従業者の平均累積被爆線量は、13.3ミリシーベルトに過ぎず、その上10ミリシーベルト以下の従業者が74.4%を占めるため、放射線業務従業者の累積被爆線量の中央値(放射線業務従業者のうち、累積被爆線量の少ない人から数えて真ん中の人の累積被爆線量)は、10ミリシーベルトよりずっと下のレベルと考えられることです。
 次に、放射線業務従業者の中で、累積被爆線量の違いに応じて比較した内部比較調査では、累積被爆線量に応じて、死亡の危険性が増加しているという傾向があるかどうかを調査しています。その結果、食道がん(p=0.039)、肺がん(p=0.007)、肝臓がん(p=0.025)、非ホジキンリンパ腫(p=0.028)、多発性骨髄腫(p=0.032)で、累積線量とともに有意に増加する傾向が認められています。その結果、全悪性新生物の死亡率(p=0.024)も、累白血病を除く全悪性新生物の死亡率(p=0.024)も、累積線量とともに有意に増加する傾向が認められています。
これらの結果は、累積100ミリシーベルト以下の低線量の放射線被曝でも、偶然では説明出来ない、被爆線量に比例した癌の発生リスクの上昇があることを示しており、累積20ミリシーベルト以下でもそれに応じた確率で、健康への影響があることを示しています。実際に、これらの死亡率の増加は、累積10ミリシーベルト以上から認められ(観察死亡数/期待死亡数(O/E比):双方1.04)、累積20ミリシーベルト以上では、更に高まっています(O/E比:1.08及び1.07)。
癌は喫煙や飲酒によっても起こりますが、原子力発電所の放射線業務従業者では、心筋梗塞や胃潰瘍など、喫煙で多くなる他の病気は多くなっておらず、また、大腸癌など、飲酒で多くなる他の病気も多くなっていません。したがって、この調査の結果は、喫煙や飲酒の影響では説明することが出来ません。
文部科学省は、自らが委託し、税金で行った調査でありながら、現在まで、この調査結果について、ほとんど検討を行っていません。
ICRPも、100ミリシーベルト以下の低線量放射線による発癌は、放射線の確率的影響(放射線被爆線量に比例する影響)と考えるのが科学的に最も正しいとしています。たとえ20ミリシーベルト以下の被爆であっても、その被爆線量に応じた発癌リスクの上昇を起こすのです。
報道によれば、過去に癌を発症して労災認定された原発作業員は10人いて、最も少ない人の累積被爆線量は約5ミリシーベルトであったといいます。年間5ミリシーベルト以上の被爆と、被爆後1年以降の白血病(血液のがん)の発症があれば、労災認定されるのです。これは、ある意味で、政府が年間5ミリシーベルトの被爆と発癌との因果関係を認めているということです。
現在、政府は、福島県の校庭の利用の許容限度を年間被爆20ミリシーベルトとしています。この基準でいけば、今後、1年経過以降に白血病になる小中学生は、全員、被爆のためだと認定することになってしまいます。
少なくとも、政府は、今まで、年間20ミリシーベルト以下ならば、許容範囲として対応してきました。一体、どのような科学的根拠があって、年間20ミリシーベルト以下であれば、安全、安全と言っているのでしょうか?
 さらに言えば、政府は、これまで、内部被爆、すなわち、食べ物や呼吸によって体内に取り入れられた放射線の量を、推計したり、ホールボディー・カウンターで測定したりして、環境中からの外部被爆と比較して無視出来る程度に小さいとしてきましたが、癌は肺癌なら肺の局所で、胃癌なら胃の局所での遺伝子変異から発生する病気で、全体の量がどうであれ、関係がなく発生する病気なのです。先日の衆議院の厚生労働委員会の参考人質疑でも、局所に沈着した放射線同位元素の発癌性について、複数の専門家が指摘していました。
政府は、第2次補正予算で、一部の住民を対象に、ホールボディー・カウンターによる測定を取り入れましたが、これでは今後最も問題となる発癌の問題に対応できません。政府は、局所に沈着した放射線同位元素の影響について、何ら考慮していないのです。
 被災地の皆さんの健康への影響は、現政府が考えているより、ずっと複雑な問題です。被災民の皆さんの健康を考えるならば、いい加減な判断で、安全だ、安全だ、というより、出来るだけ的確な科学的判断をした上で、国民の皆さんに、可能な限りの情報を迅速に提供すべきなのです。


8月1日②

私は、今回の政府の対応に問題点は2点あると考えています。
第1点は、一点のモニタリングデータを根拠として、それで広い範囲の危険性を判断していることです。どこまでを避難区域とするか、といった基準作りばかりをばかり考えて、現実に1人1人の被災者の皆さんが、どのように被爆しているのか考えていません。役所仕事としては、それで済むのかもしれませんが、健康影響を受ける方はたまりません。
 放射線の実態は微小な粒子だから、決して同心円状には広がりません。発電所から何キロ、といった形で区域設定しても、放射性粒子は、関係無く広がるのです。
児玉参考人は、同じ学校の校庭でも、1ヶ所で毎時2マイクロシーベルトだったけれども、違う場所では33マイクロシーベルトだったと述べています。場所によって大きな違いがあるのです。
しかし、政府は、これまで、このような可能性を全く考慮してきませんでした。
政府は、第2次補正予算で、避難地域の方々に累積線量計を配布することにしました。しかし、累積線量計では、被爆の事実が判明するまでに3カ月程度を要し、被爆を避けることには何ら役立ちません。
これに対し、放射線検出器があれば、家庭内でもどこが放射線が高いのか直ぐに測定することができます。私も放射性同位元素を用いた医学研究をやっていたのですが、検出器があれば、実験室のどこに汚染があるのか簡単に検出でき、その場で除染できました。
政府が放射線検出器を被災地届けたのは数百個程度でしかありません。現在では、1つ4万円程度の放射線検出器も販売されています。仮に、避難地域の10万戸の家庭に1個ずつ配布したとしても、40億円です。第1次補正予算は約4兆円、第2次補正予算は約2兆円ですから、容易に可能なはずでした。しかし、政府は、被爆の実態を何ら考えてこなかったのです。
海江田大臣は、「古川議員への答弁のために調べてみた。第3次補正予算では、放射線検出器の全戸配布を行えるよう、私からも進言する」と約束しました。
 
政府の対応の問題点の第2は、政府が、放射線汚染が起こった地域の皆様の実質的な健康を、ICRPの基準を越えるか越えないかだけで判断しようとしている点です。そもそも、ICRPの基準は、平時は年間1ミリシーベルトが限度なのに、事故後は、突如、20ミリシーベルトに上がっても許容されることになっています。20倍も違って、健康への影響はない、と言われたって信じようがありません。福島の住民の皆さんの健康に影響があるか否かは、基準を越えるか越えないかとは、全く別の問題であり、これは完全な問題のすり替えです。
一体、年間20.1ミリシーベルトの場合と年間19.9ミリシーベルトの場合とで、健康への影響がどれほど違うのでしょうか。菅総理に、このことを問いました。菅総理は、何ら実質的な回答は出来ず、ただ、専門家に任せてあるという1点張りでした。本当は、年間20.1ミリシーベルトの場合と年間19.9ミリシーベルトの場合とでは、健康への影響にほとんど違いはありません。それなのに、政府は、年間20ミリシーベルト以上と以下で全く異なる対応をしているのです。
被爆線量が、年間19.9ミリシーベルトの場合でも、健康に対して相応の影響が考えられます。政府が本当にすべきことは、除染作業を進め、放射線検出器を配布するとともに、住民の皆さんが出来るだけ被爆線量を低くするための情報を提供することなのです。


8月1日①

東日本大震災復興特別委員会で質問に立ちました。
〔外部リンク:こちらで、映像をご覧いただけます。〕
7月29日に、政府が6月30日に設定した「特定避難勧奨地点」の方々、すなわち、年間20ミリシーベルトの被爆線量に達するおそれがある世帯の方々が初めて避難しました。震災発生から既に4ヶ月半が経過してのことです。
先日、実際に、特定避難勧奨地点に当たるとされた方々の話を聞いたが、比較的除汚の出来ている玄関や庭先だけで測定していて、もっと高い線量の場所があるのに不安である、といった意見でした。
政府は計画的避難区域、すなわち1年以内に積算放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある地域を4月22日に設定しましたが、この区域の方々が移転を始められたのは、5月15日のことで、震災発生から2ヶ月以上が経過しています。
事故後、政府は「差し当たり健康に余り問題はない」と繰り返してきましたが、それが、数ヶ月も後になって、やっぱり健康への影響が懸念されるというわけですから、避難する方々としては、これまで被爆してしまったのはどうなるのだと思い、到底納得できません。
事故直後に比べれば、すでに測定される放射線線量もずっと低くなっているはずなのに、今更、何だ、ということになるのが当然です。
7月28日の衆議院の厚生労働委員会の参考人質疑で、東京大学アイソトープセンター総合センター長の児玉龍彦教授は、事故後の政府が「差し当たり健康に余り問題はない」と繰り返していた時点で、既に「実際にこれは大変なことになる」と思っていたと発言していました。 
今回の事故は、当初からレベル7と考える専門家が極めて多くいました。ところが、政府がこれを認めたのは、4月12日のことです。放出される放射線同位元素の総量が多ければ、放射線汚染の予測も変更しなければならなりません。しかし、政府は健康への問題はない、問題はない、と繰り返し、事態の深刻さが全く分かっていませんでした。
そこで、事故当初、「差し当たり健康に余り問題はない」と繰り返してきた根拠について問いました。
菅総理大臣は、専門家による議論を経て、原子力発電所を中心に、放射性同位元素がまき散らされる距離を推定した、と答弁しました。