参議院厚生労働委員会で「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の質疑に立ち、議論の一つとなっているかかりつけ医機能報告制度について重点的に質問させていただきました。
日本の医療費対GDP比(2019年)は11.0%で、欧州諸国(英10.2%,独11.7%,仏11.1%)と同等、米国(16.9%)の65%ほどの水準であり、突出した高齢化の状況を考慮すれば、最も効率的と言えます。また2001年以後、健康寿命は男女共に延伸を続け、2010年以後、不健康な期間が男女共に短縮しています。コロナ・パンデミックにおいて、高齢化にもかかわらず対人口当たり死亡率が先進国でも最低だったのは、国民の平素の良好な健康状態(併存疾患が少ない)を反映していると評価されています。
複数の併存疾患を持つ高齢者が増えていくために、地域医療において各種のかかりつけ医機能を“面”として、すなわち病院等の連携によって整備していくことは重要です。その場合、患者にとって最も重要ことは、自分の各疾患、例えば高血圧や糖尿病・心不全・閉塞性肺疾患などのそれぞれについて、最新の知見に基づく適切に診療を行えるかかりつけ医が充足されていることです。各種の内科的慢性疾患への十分に適切な診療を、一人の医師に期待するのは難しいといえます。高血圧の専門家で糖尿病の専門家という医師は見たことがありません。家庭医制度を持つ米国の医療では、高血圧や糖尿病などの慢性疾患が実地の診療においては、適切には管理されておらず、そのために疾患悪化が避けられなくなり、医療費が増加することが指摘されています。
複数の慢性疾患を持つ高齢患者には、各種の病態を専門性の高い診療所が連携して対応することが必要であり、かかりつけ医機能の報告制度に関する今後の詳細な内容の作成はエビデンスに基づき行って欲しい旨を厚生労働省には念押しさせていただきました。