限られた財の配分の問題は、「配分の正義」として語られてきた医療倫理学上の古典的課題です。基本的視座としては、平等主義的な考え方と功利主義的な考え方が対立します。広く用いられ、中医協でも採用されたQualy(Quality-adjusted Life Year)は、後者の1例ですが、マクロの議論と現場の臨床との整合性や、「効果」の評価の仕方などに多くの議論があります。そもそも低所得者層に健康状態の悪い割合が高いため、医療保険制度だけの問題ではなく、公衆衛生的観点を含め、広く所得再分配制度の中で考えるべきだという見解もあります。