制癌剤適用研究会が開催され、故久保田哲朗教授の追悼講演を行いました。もともと、故久保田教授が今回の研究会の会長を務め、その座長の下で、私が特別講演を行う予定となっていました。一般的には大会長が会長講演を行うのが通例なので、今思うと、故久保田教授は、初めから自分の余命が少ない可能性を考え、私を特別講演者に予定していたように思います。
久保田教授とは、20年弱来、個々の患者さんに効果のある抗癌剤と効果のない抗癌剤を事前に見分けるための抗癌剤感受性試験の研究・開発を行ってきました。抗癌剤が効くか効かないかは、個々の患者さんによって大きく違います。大きな効果を発揮する場合もありますが、正常組織にとっては強い毒なので、効果がない場合には、かえって身体を傷みつける結果になります。如何に個々の患者さんにおける各抗癌剤の効果を予測するかは、以前からの重大な課題です。
私が、久保田教授の指導の下で博士の学位の研究テーマとしてきたのは「組織培養法」を用いた抗癌剤感受性試験の開発ですが、研究成果の論文は米国癌学会雑誌に掲載され、この技術は、その後、高度先進医療に指定を受け、昨年には悲願であった保険適用を受けることになりました。自分が開発した技術が実地の保険医療として用いられるというのは極めて稀なことであり、大変に誇りに思っています。ただ、保険適用で受ける診療報酬が低額過ぎるため、現在の普及度では機器を提供している企業がコスト割れを起こしていて、続行が困難になってきています。研究をさらに積み重ねることによって広く有用性を示し、普及させていくことが必要です。故久保田教授との最後のメールのやり取りで交わした内容を、故久保田教授からの最後のメッセージという形で、聴衆の皆様に話しました。皆様から、「長く記憶に留まる感動的な講演だった」と言っていただきました。